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中国、ウイグル自治区出身の彼が12年間日本で暮らして想うこと アラファトアブドゼミ(25) 産業用ロボット商社/営業

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■見るからに外国人なのにどうして、日本語がこんなにも上手いのか。と思った第一印象

 大学時代からの友人で中国、ウイグル自治区出身。外国人で流暢に日本語を話す人を始めて見て驚いた。会った時から、学校ですれ違う時も、卒業以来に再会した今回も笑顔。人を受け入れる雰囲気が漂っていていつ話しても気持ちが良い。卒業後から今までの仕事。日本で生活していくことの苦労を語ってくれた。

 今回のインタビューは以前アップした菊池旺吏の家で行い、写真も撮ってくれた。

 

■故郷とカルチャーショック

 ウイグル自治区は中国の最西部に位置し、日本の約4.5倍ほどの大きさ。砂漠が1/4を占める。彼が産まれたところはビルが立ち並ぶ都市で生まれ、東京と似た雰囲気の場所。貧富の差が激しく、電気が通ってないところも地域によっては今もある。
 日本に来てからは文化の違いにとまどった。ラーメンと餃子を一緒に食べていることに驚いたそうだ。「ラーメンがメインで餃子がおかずなんて考えられなかった。(笑)故郷では餃子もメインだから、なんで?と思った。」それ以外にも、最初は生ものが苦手で、寿司が全く食べられなかった。しかし、今では大好物のひとつになった。

 

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趣味のドライブ。富士山をバックに。


■中学校入学から始まった日本での生活

 日本に来た理由は、父親が大学で音楽関係の教授をしており、仕事の関係で日本にやってきた。中学校2年生から生活を始め、今年で12年となる。「来たとき、日本の事はなにもわからなかったけど、生活していくうちに日本の文化・習慣に慣れていった。」その言葉から当時の苦い思い出を話してくれた。日本に来て、3日後に中学校入学。学校は初めての外国人学生で周囲から珍しがられた。文化や言葉の違いに悪戦苦闘し、いじめにもあった。「来たときは毎晩泣いていた。どうしてこんなところに来てしまったんだって。明日学校行きたくないと毎晩思っていた。」その生活が一年間続いた。日々の生活、言語のシャワーを浴びる中で段々と日本語がわかり、徐々に友達も増えていった。

  高校は国際高校国際教養化に入学。「生徒は日本人の方が多く、すこし外国人生徒が居た。」そこで、メキメキと日本語を上達すると共に楽しい学校生活だったという。進路を考えた時に、国際的な仕事をしたい。また、英語や言語の研究をしてみようかなと思い、東京国際大学、国際関係学科に進学した。

 

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■日々の生活の中で本来の方向性を失いかけた

 大学4年間は学業と、バイト漬けの日々だった。コンビニ、牛丼屋、宴会場のウエイターなどを経験し、大学3年時には英語をメインとしたゼミに入り、卒業論文はの言語教育に関することを書いた。中学から大学の学生生活を通して日本語と英語のスキルを身に付け、就職した先は車の中古車販売のディーラーだった。元々、車が好きで会社も海外進出しており、色々なメーカーを知れると思ったからだ。しかし、「仕事内容が過酷で勤務体制が良くなかった。本来、身を投じたい国際関係の場に触れることがなく、このままで良いのかな。と思い約2年間勤めて退職した。」 

 

■知らない世界を見られる

 そうして転職を試みる。現在は産業用機械の専門商社に勤めて1年半。取引先は工場の機械、エレベーターに使われる減速機、建機に使われるウ品、産業用ロボットなど、など多岐に渡る。国内、海外問わず出張もある。

 「今まで気にしたことないところを扱っているのが楽しい。」工場の機械や、飛行機に使われているモーター、ディーゼルエンジンに使われる油圧ホースの取り扱いもしている。実際に使われている様子を見ると、「この機械うちの会社が取り扱っている製品を使ってるんだ。」と自分の仕事を誇りに思え、「これまでの生活で触れることがなかったものを扱い、自分が携わった物が世の中で役に立っている。体験したり、実感できるのがすごい新鮮。」私も高卒で入った会社の製品が、巷で使われているのを見て彼と似た感覚を味わったことがある。

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■自分のやりたいことができる会社

 前の職場での営業経験が今も生きている。お客様への接し方、どのように商品に興味を持ち購入してくれのかを学んだ。今扱うものは、ロボットやモーターなどの機械製品。加えて、理数系のことも学ぶ必要性が出てきた。それらをいかに、取引先の人と交渉をして商談を前に進める交渉術。前職の知識と今学ぶべきことを混ぜて仕事をできる楽しさを噛みしめている。

 自分のやりたいことができる。という側面がなによりもやりがいとなっている。「会社に、こういうことをやってみたいと言える社風。自分たちがしたいことを上司に打診し、認められ現在も何人かとプロジェクトている。」

 

■会社での人間関係にも意識力を持って

 彼の持つひとつの強みとして意識力だと話す。「日本に来た時、なぜ、来ちゃったんだろう。と思ったけど、来たからには中途半端では自分の為にならないと思って今日まで来た。」自分の生活を豊かにするために日本文化に馴染む。それには些細なことにも意識を注ぐことが必須となったのだろう。

 社会人となり、その意識力を用い社会や社内での人付き合いの仕方を学んでいる。「学生のときはものごとを深く考えて付き合いはしない。けど、仕事になるとガラッと変わる。取引先とのやりとりや、社内営業の重要さも感じている。」

 12年日本に住みマインドはすっかりと日本人となり、社内でも「上司から日本人だと思って話すぞ。と言われる。最初はショックだったけど、同じ目線で言ってくれていると思った。外人だからゆっくり喋ろう、メールはカタカナにしようとかではなく、まんまの日本人だと思って接してくれている。」

 仕事・お金・時間。様々な利害関係が発生する中で、”外国人だから”という考えではなく、対等になって接する関係だからこそ、彼にとって良い場所となっているのかもしれない。

 

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写真手前左に写るのがアラファト


 ■日本と海外の工場の違い

 日本と海外の工場を見てきた彼に、モノづくりの現場の違いを聞いてみた。「日本は工場の制服があり、定時や休憩時間がしっかり定まっている。一方、アメリカでは私服で作業する現場も多々ある。工場の中はロックなどの音楽が流れながら仕事をしラフに やってる。それでも良い製品ができている。日本と比べて働き方が自由だからこそ、続ける人も多く、社内の雰囲気が良い。」

 作業の環境が違えど作っているもののクオリティはほぼ等しい。その中でモノづくり大国日本と耳にするがその点に関して聞くと「日本は5s(整理・整頓・清潔・清掃・躾の頭文字のSを取ったもの)報連相を守ってるからこそメイドインジャパンは誇りがある。そこは譲ってはいけない。品質もさることながら、そこも評価されて、海外の人たちもリスペクトがある。」

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■将来は、自分でなんかやってみたい

 前職に勤めていた時は帰国しよう思った。「学業も終え、そろそろ帰国しても良いのかなと感じた。でも、ここまで経験して今帰るのはもったいないな。もう少しやってみよう。」と自問自答した。「アラファト、なんか持って帰ってきたか?と母国の友人たちから聞かれた時、なにかちゃんと具体的に伝えたい。と思った。」そうして、現在の会社に就職もした。いつになるかは定かではないが、起業にしろ日本で自分でなにか起こしてみいそうだ。その意味でも、現在の職場は国内外の情勢を見ながら、商社マンとして様々経験を積める場と感じているようだ。

 

■さいごー今いる環境の中で最大のパフォーマンスを

 日本での生活にはじまり、大学卒業から社会人。苦労が多かった人生なのは間違いない。中学校時代は思春期で精神的に落ち込むこともあったようだが、結果的には自分が求め、成長できる環境で切磋琢磨している。最初は母国と違うことが多かったが、時間が経つに連れ、日本の文化に馴染み、理解し、適応している。その時々の環境でベストを尽くしてきたからこそ、日本語力や日本人の持つコミュニケーションの取り方を学び、社会でもそれが生きている。

 よく、日本人から海外に行きたいと相談されたり、海外での体験談を聞くことがあるという。自分の経験を踏まえ、海外に行きたい人にアドバイスをするとしたら「日本人はシャイというイメージが強い。その殻を抜け出せずに苦労してしまう場面もあると思う。でも、言いたいことを言わないと後々、苦労することがある。もしかしたら、現地でいじめにも合うかも知れない。でも、それを正と捉えてほしい。今も日本で生活して働いているのも、当時の経験があってこそだと思う。」

 新しい環境に身を置けば違うことの連続。それは、海外に行かずとも、進学、アルバイト、サークル、就職、転職。その時々で自分もまわりも変わる。そこに直面したときに、どれだけ時間と密度を投じていくのかで広がり方は無限大だ。人種や言語、性別、仕事など関係なく、今いる環境でベストを尽くして行きたい。

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今回、写真撮影、部屋の提供をしてくれた旺吏ありがとう。いつもブログのアドバイスもくれて助かってるよ。近々アラファトの運転で旅行に行きましょう。